人生初めて、頭使って疲れながらいつの間にかエンドロールで、見終わって困惑した映画でした
作品名:Everything Everywhere All At Once (一度に全ての場所で全てのものが集まる・・・的な意味かと)
公開日:2023年3月3日
監督:ダニエルズ
主演:ミシェル・ヨー
【あらすじ】
中国系移民でコインランドリーを営むエブリン(ミシェル・ヨー)が突然、世界線の違う夫が目の前に現れ、さまざまな世界線(マルチバース)の自分に変われる能力を手に入れることに。そして、エブリンは無数にあるマルチバースの壊滅の危機を告げられるも、最悪の結末を防ぐための最後の希望として今の世界線の自分が選ばれることになり、その理解不能な戦いに立ち向かっていくことになる。
アベンジャーズエンドゲームのルッソ兄弟が製作に関わり、第95回アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優、助演男優・女優賞など主要部門最多受賞を記録した大注目作。監督・脚本は、「スイスアーミーマン」でダニエルラドクリフを死体役にさせたことで話題を呼んだダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート
【感想】
とにかく!!!!絵と設定が新しすぎる。
マルチバースの題材をふんだんに解釈して、映像へと贅沢に落とし込んだアトラクション的映画です。
その上すごいのが、ストーリー性もかなり作り込んでいる感じです。
要は、「もしもあの時違う選択をしてたら」という人生での後悔と、中2病特有の「何してもダメだし、やる気でない」っていう自分の世界観の中だけで落ち込む負の感情(虚無感という表現が一番使われています)を、見事に表現し切っていました。そこに、大人からの愛で救う。どこにでもある子育てがテーマじゃないかと思うくらい、壮大な映像とは裏腹に、とても一般的な結末になっています。
全力でのおふざけ×感動のハートフル
この2つの要素が共存していました。
一見するとこの映画は一体何をしたいのかと見ている私たちを混乱させてきます。ふざけているのかと思ったら、真面目に語りかけてくる、ちょっとサイコな印象を受けてしまいます。しかし、その両点の全力具合に心動かされました。
①マルチバースの突き詰めた映像表現
話は主人公のエブリンが、「過去の選択で違う方を選んでいたら、その後の人生も大きく変わっている自分がいる」その自分が何百、何千、何万パターンもあるという前提に世界が形成されていて、その何パターンもある自分に自在に変更できる装置を手に入れて、その多元宇宙のあらゆる可能性を全破壊しようとする敵と戦う物語です。(文字化するとどうしても意味わからなくなります笑)
あらゆるエブリンが登場します。
メインのエブリンはコインランドリーを経営する貧乏家族の母ですが、他の世界線のエブリンは、大女優、歌手、ビザ屋のバイトなど選択を変えたらあり得そうな違う世界線の自分や、さらに指がソーセージになった人類、人形として生まれた世界線、石・・・など、これまで見たことないバリエーションのマルチバースの“自分”を登場させていました。その幅広さに、やりきるなー、やりすぎだろ!と突っ込みたくなります。アクションはかっこよいですが、ヘンテコでとんでもない下ネタもあるので、また頭がおかしくなりそうな表現まで多重性のある映画です。
②家族の絆の話
壮大な世界観と映像とは裏腹に、この映画はシンプルに言えることがあります。
それは、1つの家族に関わる話という、ただそれだけの内容です。
一言にいうとなかなか伝わりませんが、この映画が壮大に見せて表現していたものは、主には「親子愛」「家族愛」です。
母であるエブリンは、コインランドリーで貧乏生活する自分と夫のチョイスへの後悔、同性愛者の娘に対する苦悩をもっています。
マルチバースを通して、エブリンの後悔を最大限に表現して、選択は何にしても後悔は付き物というやるせなさとそれでも生きていく、愛していくということに気づく流れですが
さらに、娘のジョイに関しては、この映画の最大の敵という設定で、マルチバースを経験しすぎた超越的な存在になり、全マルチバースを壊そうとするキャラとなっています。その芯にあるキャラクター設定とは、「世界はどんな選択をしても無意味、人生はつまらないもの」と若者特有のダークサイドで虚無感に満ち溢れた存在として表現されています。
この母と娘が戦って、決着していくわけですが、その一部始終はまさに母と娘のお互いぶつかって、認め合っていく親子関係そのものです。
母は、情けない夫と反抗的な娘に対しても不満を抱きながら、愛していく。
娘は、自分の選択も意味があるものとして、認め認められながら1つ1つを大事にしていくようになる。
その普遍的な一家族内の話を描いているのです。
夫の終盤の一言
Be Kind:親切・優しくいることだ
マルチバースによる虚無感を打破する、人生を豊かにする魔法の言葉だと思います。
こんな大きな二面性のある映画は、なかなか見れないですし、ややこしいマルチバースを映像化するところ多くのクリエーターが綺麗におさめようとするところを
ダニエルズという振り切ったヘンテコ映画を作る監督が撮ったことによって到達した作品だと思いました。
【ちなみに】
ジョイの若者特有の虚無感の表現は、ダニエルズの若い時に闇落ちしていたときの世界感を表現していたそうです。
公開・配信情報
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