脚本家・テイラー・シェリダン
近年とてつもなく頭角を現してきている大好きな脚本家をご紹介!
好きすぎて語らせて系です汗
脚本家兼映画監督であり、その緻密なストーリーテリングとキャラクターの描写で知られています。彼は元々役者で、脚本デビュー作である「ボーダーライン」や、ドラマシリーズなどの作品で高い評価を受け、社会的なテーマや人間の複雑な心情を掘り下げる作風が特徴です。彼の作品は緊迫感あふれるストーリー展開とキャラクターの深みで観客を引き込み、映画界での存在感を示しています。
ひとつ、はっきりお伝えしたいのは・・・
「題材やテーマは重いのに、見せ方がうまさぎて面白いが必ず勝つ。それでいて、引きずるレベルの大きい爪痕を残す話を作る」そんな人です。
今回ご紹介したいのは、2014-2016年の3年間に世に送り出された、テイラーシェリダン脚本の”フロンティア三部作”です。
アメリカの荒廃した土地、辺境の地にスポットを当てたサスペンス映画をテイラーシェリダンは3年連続で公開しました。「フロンティア三部作」と呼ばれるのは、それぞれの映画が異なる設定や物語の中で、共通として未開地の闇に焦点を当てているからです。
「アメリカとメキシコ国境地域」、「テキサスの荒野」、「ネイティブアメリカンの保留地」という、世の中では、頻繁にその土地のことが語られない、いわば国のグレー(ダーク寄り)な場所での社会問題にスポットを当てて、映画でエグっていきます。それらどの作品も、濃厚で面白く、グサりと刺さる、1つも外しがない三部作となりました。
監督: ドゥニ・ヴィルヌーヴ
主演: エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン
あらすじ: メキシコとアメリカの国境を舞台に、麻薬戦争を描いたサスペンス・スリラー。FBI捜査官が麻薬カルテルとの危険な戦いに巻き込まれる。
魅力・感想
メキシコ麻薬戦争をリアルかつ圧倒的な緊張感で、不安定な世界観を見事に表現しています。
主人公のFBI捜査官ケイト(エミリーブラント)は、戦場で麻薬カルテルのボスを探し出す任務につく。しかし、その作戦チームに加わる政府直属の対麻薬組織の猛者・アレハンドロ(ベネチオデルトロ)によるルール度外視の非合法ギリギリの作戦に振り回されて、辺境の地での麻薬戦争の渦中にいることの残酷さを味わう話となっています。ケイトが上官に、捜査の非合法さを訴えても、その上官よりさらに上の政府から指令を受けている元での行動としてほとんど野放し状態にされているため、ケイトはどうしようもありません。
しかも、ほぼ非合法なやり方のアレハンドロですが、実際に自分の作戦通りにボスを追い詰めるところまで進み、ミッションを完遂させてしまいます。ケイトを敵の囮にしたり、話は聞かないなど、散々に振り回し、
「これが麻薬戦争のリアルだ」
と言わんばかりの戦場の現実的な厳しさを突きつけてきます。
オフィシャルには隠された、対犯罪組織の存在を、生々しく描いた一作となりました。アレハンドロ役のベネチオデルトロは、ほとんど悪役と同じ風貌ですが、めちゃくちゃ骨太な役をしていて、おっさんに心底惚れてしまう瞬間を味わえます。
このように、善と悪の境目ギリギリな状況に、見入ってしまいます。場面ごとの緊張感、一触即発のシーン、見せ所もかなりわかっている演出的展開で飽きさせません。
まずは何よりこの1本!
テイラーシェリダン脚本を味わっていただきたい一作です。
監督: デヴィッド・マッケンジー
主演: クリス・パイン、ベン・フォスター、ジェフ・ブリッジス
あらすじ: 兄弟が銀行強盗を繰り返す中、老銀行員と警察官が彼らを追うクライム・サスペンス。
魅力・感想
犯罪と復讐を描いたこれまた骨太な一作で、登場人物の人間臭さと道徳的ジレンマを見事に描いています。
敵対する者たち(警官と強盗)両方に細かくスポットをあてている、そのバランスが絶妙です。悪党も単なる悪ではなく、人間味ありにし、正義側もなんとなくダメで、勧善懲悪ストレートにしない。登場人物の精神状態に寄せた脚本展開にしているため、両側に共感できてしまう作り。それによって、リアルに起こっていると錯覚してしまいます。エンタメ的にも、充分に見せ所を作っていてリアルだけでなく映画としての楽しさもしっかり込み込み。
「不況で苦しむテキサスの田舎」という、人々から無視されているような土地で悲しい事件が展開される、その過酷さにスポットを当てた作品です!
Netflix独占で配信中。
監督: テイラー・シェリダン
主演: ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン、グレアム・グリーン
あらすじ: インディアン保留地での未解決の殺人事件を追う捜査官と、現実と過去のトラウマに苦しむ男性の物語。
魅力・感想
3作品の中で、一番痛烈で、悲しい作品です。
深い哀愁と厳しい現実が絡み合うサスペンス
物語は、風景の美しさの裏に隠されたワイオミング州で、ネイティブアメリカンの少女たちの不審死や失踪が起こっている事件(実際に、少女失踪を世に知らせる「MMIW」という運動もあります)をベースにしています。
テイラーシェリダンは初監督までしているので、「三部作でこれが一番描きたかったのではないか」と、思ったほど衝撃的な内容でした。
主人公は、ジェレミーレナーとエリザベスオルセンの2人で、アベンジャーズ俳優コンビが登場し、絵的に豪華です。話の主軸は復讐劇で、ジェレミレナーは殺された少女の父の友人で、犯人を探しており、エリザベスオルセンはこの事件の調査のため派遣された警官です。事件の真相に迫る2人が織りなす緊張感と、銃撃シーンは圧巻で、静かな土地で、銃声がどでかい音で鳴るシーンなどは、私たちにまとわりつく緊迫感を増幅させてきます。
復讐劇ですが、スカッと感で落ち着くものではなく、事件の重みから悲しさが凌駕し、「忘れてはいけない現実だ」と私たちに余韻を残すインパクトを含んだ作品となっています。(一部の人は、事件のきっかけとなるシーンなどに不快感を覚えるかもしれませんので、ご注意くださいね)
ショックは大きいですが、復讐劇として見応えは保証します。ただ何よりも、こういった社会問題を知ることの重要性を私たちに教えてくれる映画です!
公開・配信情報
①ボーダーライン
✅Prime Video ✅Hulu ✅U-NEXT※見放題 2024年10月時
②最後の追跡
✅NETFILIX ※見放題 2024年10月時
③ウィンドリバー
✅Prime Video ✅Hulu ✅U-NEXT※見放題 2024年10月時
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